その昔、車の撮影で海外によく行った。他業界のひとからは、いいなあとよく言われたものだが、その実大変なのだ。車の撮影は早朝時間が多い。サンライズの美しい光、人出の無さなど、条件が揃うからだ。したがってスタッフの起床時間は、午前2時、3時が当たり前となる。
となると朝食は前日に買ってあったサンドイッチなどになる。ただ、これが街中だったりすると、終夜営業のダイナーやファミレスになる。僕はこのダイナースでの深夜飯がけっこう好きだった。ウエイトレスは超無愛想。コーヒーはまずく、メニューは限られる。でも良かった。
広い店内に少ない客という状態が好きなのだ。少々下品で安っぽい座席とテーブル。ここで眠気を覚まし、出発前の鋭気を引き出す。眠いから、まずいブラックコーヒーや大味で甘すぎるチョコレートドーナッツなんかが着付け薬としてはぴったり。もぐもぐ、ガブガブな時間。
今朝、某大学前のタリーズでそれに似た感覚を覚えた。横に長い店内に客はまばら。席は選び放題。試験前の緊張を抑えたくて入ったが、昔のダイナーを思い出してすっかりリラックスできた。広くて空いている、って素晴らしい。東京じゃなかなか無いけれど、たまに運よく遭遇するとうれしくなる。エンジンに火がつく気がするのだ。