うどんよりも蕎麦派である。老舗の蕎麦、田舎の蕎麦、どれも好きだが、立ち食いそばも大好きだ。いわゆる蕎麦屋のそばと、立ち食いそばのそばを比較したりしてはならない。蕎麦に境界無し、人はそれをソーバレスという(嘘)。それぞれの立場で、それぞれの旨さを発揮してくれればそれでいいのだ。
立ち食いそばは食べものとして、もちろん好きなのだが、僕は店の雰囲気も好きだ。店に入るなり「らーしゃいあせー」という投げやりな声と白いチケット販売機に迎えられる。この無造作な扱いがいい。お世辞、建前、完全抜きだ。煮えたつ大鍋の向こうから「そば、うどん、どっちすか」との素早い問い。あうんの呼吸で応える自分。お盆も箸も水まで自ら準備完了だ。
調理が速い。速すぎる(笑)。変に気を持たせたりしない。茹で上がれば、一気に盛り付けへ。体裁よりもスピードが勝負なのである。そこがいい。こちらも速度に乗せられて、自ずと食べるのが速くなる。すする力も強めになる。隣のサラリーマンと競争してる気がしてくる。いや競争なのだ。
そうやって食べるものだから、食べ終わると意味不明な達成感に満たされる。食べきったぞと。帰り際も颯爽といきたいな。絶妙なタイミングで「ごちそーさまー」と投げかける、返す刀で「あざーしたー」の声がする。そんなこだまに見送られ、真夏の外にでててみるとミンミンゼミが出迎える。立ち食いそばのある国に生まれて良かった。それでいいのだ。パパなのだ。