フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

なぜ大滝なのか

Pen (ペン) 「特集:完全保存版 大滝詠一に恋をして。」〈2021年4/1号〉 [雑誌]

「ロング・バケイション」は1981年3月21日に発売された。その翌月、僕は大学に入学。東京吉祥寺のボロアパートに住み始めた。金はまったく無かったが、理由なき希望だけはあったあの頃。このアルバムは果てしなく、めくるめく未来を映し出した。「君は天然色」のイントロを聴くたびに、あの春の躍動を思い出す。

 

大滝詠一とは何者だ? 僕はそこから遡って彼を追った。ナイアガラレーベル、一連のCM音楽、はっぴいえんど、と追体験で夢中になった。そこでさらに彼を好きになったのは、その企画力だった。楽曲の素晴らしさはもちろんなのだが、その前提となるアルバムコンセプトへのこだわりや遊び心に強く惹かれたのだ。

 

当時ナイアガラファンのバイブルと呼ばれていた本、「オールアバウトナイアガラ」を夢中になって読んだ。彼の音楽観や、落語やプロ野球といった趣味、福生の自宅スタジオ、ラジオプログラム・ゴーゴーナイアガラなどについてつぶさに書かれていた。なかでも好きだったのが、数十年にわたる彼の未来の計画だった。

 

ナイアガラレーベルをどう展開するか、その計画だ。2001年には「2001年ナイアガラの旅」を出す、とか。そのうち「ナイアガラトライアングル2」だけは実現された。彼は企画パッケージを楽しんでいるのだ。自分の世界を巧みににブランディングして、高い表現力で包み込んでいる。こんな男、ちょっといない。だから大滝なのだ。