フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

フュージョン勉強会その11

リターン・トゥ・フォーエヴァー

来たな、という感じだろう。本の順番で紹介しているのだが、割と早めにこの名盤が来た。チック・コリアが1972年に世に問うたフュージョンの傑作だ。僕が聞いたのは1980年頃。出だしのミステリアスな雰囲気に、一気に鳥肌が立ったのをよく覚えている。思ったのは「大人」だ。やんちゃさや、無邪気さや、青臭さはここには無い。あるのは大人の芸術だけだ。青二才の僕は、その高みに震えた。

 

チックが伝えたいのは何だろう、とも考えさせられた。基本、インストルメンタルの世界が中心であるので、メッセージやコンセプトはサウンドだけから汲み取る。唯一のヒントがあるとしたら曲名くらいか。サウンドから感じるのは、荒涼とした大人の世界だ。そして大勢ではない世界。一人の内面だろうか。静かに、しかし熱く自己を見つめるようなイメージ。インナートリップへのいざない。

 

このアルバムは一人で聴くアルバムだ。友人と聴いたりはしない。ましてや彼女と聴いたりもしなかった。夜遅く、四畳半下宿でヘッドフォンしながら聴くか、吉祥寺のフュージョン喫茶で聴くか。少し背伸びをして、難し目の本を読むときとか。半分も理解していない浅田彰とか吉岡隆明とかに挑んでみたりとか(笑)。そんな時、このアルバムが補助エンジンになってくれた気がする。

 

そんなことを思い出しながら久しぶりに聴いてみると、3曲目、4曲目は難解とは思えず、素直に美しい曲だと思えた。わざわざ文化人類学の本など開く必要はない。チックの才能にはため息が出るほどだが、それにも増して、ベースで参加のスタンリー・クラークに感動してしまう。4曲目のベースソロ。たまらんなあ。ジジイになるのは寂しくもあるが、若いころ分からなかった味に気づくことは良い点だなあ。