フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

初・溝口

残菊物語 [レンタル落ち]

大学院の講義で、溝口健二監督について学んだ。もちろん名前は知っていたが、正直一本もこれまで見たことはなかった。古い日本映画では、小津安二郎黒澤明どまりであったのだ。おそらく自分のどこかに「映画は時代とともに進化するものであるから、大昔の映画は遅れている」という先入観があったと思う。また、古いがゆえに、物語に入り込めず楽しめないであろうと決めつけていた。

 

洋画だとあまりそう思わないのも、典型的な洋画至上主義的な先入観のせいだと思う。こういう先入観をある意味強制的に壊して、様々な芸術の価値を再認識することも大学院に入った一つの理由だ。何十年も生きてきて、いい年になっているのに、見るべきもの、読むべきものを結構素通りしてきた。溝口健二監督作品も、調べたらけっこう録画しるのに単なるコレクションと化していたのだ。

 

今回の講義でまず見たのが「残菊物語」だった。題名すら知らなかった。「雨月物語」などは知っていたけれど、、、。だが、この作品こそ、教授曰く邦画ベストワンとする人が多いのだそうだ。1939年に制作された歌舞伎役者と芸者の悲しい恋の物語である。せりふ回しは舞台せりふのようで、どうしても古臭く感じてしまうが、驚くべきはカメラワークであった。パンの仕方、フィックスの絵、素晴らしい。

 

溝口ファンなら語りつくされているのだろうが、僕は初めて見たので本当に驚いた。シーンの切り取りが実に斬新だ。その多くがワンカットであるため、俳優の演技は間違いを犯すことができず、現場は緊張感あふれるものだったという。また、もちろんモノクロームであるのだが、それがゆえに夜の屋内、屋外の絵が魅力的である。これまで見なかったことに後悔はない。なぜなら今、感動が深いからだ。