フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

ホームレスだがハートレスではない

ホームレス中学生

大学院の喜劇映画の最終講義は、日藝出身監督作品だった。数々の映画監督を排出している日藝のなかでも、若手と言われる監督について解説がおこなわれた。そのなかで講義後に、古厩智之監督の「ホームレス中学生」(2008年)を見てみることにした。言わずと知れた麒麟の田村裕のミリオンセラーが原作だ。アマゾンプライムだと無料だったので、即選んだ(笑)。

 

原作は読んでいなかったが、当時、麒麟の田村がテレビで悲惨且つ笑える実話を語って大うけだったのを覚えている。そのときの可笑しさだけが強烈に記憶にあったので、映画もコメディかと思いながら見始めた。が、違っていた。突然、理不尽な理由でホームレスになった中学生の話は、笑えるというより泣ける話だったのだ。兄役の西野亮廣、姉役の池脇千鶴の三兄弟の何とも健気な物語だった。

 

決してヒットするような映画ではないが、良作だと思う。三兄弟を囲む、関西の大人たちが素敵なのだ。三兄弟を救う友人の両親である宇崎竜童と田中裕子。とくに田中裕子の演技は見ものだ。関西のおばちゃんの心意気を伝えてくれる。民生委員役のいしだあゆみも素晴らしい。こんなに演技がうまいとは知らなかった。三兄弟の両親はイッセー尾形古手川祐子。意外に古手川に泣けた。

 

ここまでの極貧とは比べようがないが、僕も早くから母子家庭で貧しかったのでうなずけるところ多し。一番共感できるのは、若いときは貧しさを越える力がある、ということだ。最低限、雨風しのげれば、若さは苦労を笑える。麒麟の田村がテレビで爆笑を誘ったのも、若さゆえのチカラ。ホームレスだけど、ハートレスではない。映画のラストに、その希望が見えてうれしかった。