フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

重喜劇の妙味

台風騒動記 [VHS]

日本映画の講義を取っているのだが、これが楽しくて仕方ない。今まで見たことのない古い喜劇映画を見るのだが、とても新鮮なのだ。見る映画は松竹の作品。同じ映画会社の作品なので、けっこう出演者もだぶってくる。何本か見ていくうちに、まったく知らなかった俳優で好きな人が出てきたりもする。

 

今回見たのは山本薩夫監督の1956年制作「台風騒動記」だ。以前見た、木下恵介監督の1951年制作「カルメン故郷に帰る」からは佐田啓二が、渋谷実監督の1950年制作「てんやわんや」からは三島雅夫がこの作品にも出ている。佐田啓二中井貴一のお父さんだが、当時は売れっ子だったのだなあ。いろんな作品に二枚目役で出ている。僕が好きなのは三島雅夫だ。いんちきな中年を演じたらピカイチだからだ。

 

台風で被害を受けた地方の田舎町が舞台。町議会が、小学校が倒壊したと嘘の申請をして政府から補助金を巻き上げようとたくらむコメディだ。渋谷監督の「てんやわんや」では四国独立をめぐる田舎町の珍騒動を描いていたが、同様に「台風騒動記」も田舎町での利権まみれの地方政治を皮肉っている。まるで現在、話題の元法務大臣の賄賂事件を見ているようで、情けないやら可笑しいやら。

 

ただし、見ていて気付いたのは、いまの時代、こんなテーマを映画にすることはなくなったということだ。今村昌平監督は、喜劇のなかに様々な人間の問題を盛り込むことで自らの作品を重喜劇と称したと言う。地方政治の腐敗や、古い慣習に縛られた見えない封建制など、1950年代の喜劇作品には確かにジャーナリスティックな主張が込められている。そして笑える。これって高度だ。最近だと伊丹作品くらいしか思いつかない。これを機会に、ますます重喜劇をみてやろうと思うのであった。