20年以上昔のお話し。CM撮影でオーストラリアのシドニーを訪れた。クルマの撮影だったので、ロケハンも含めて2週間ほど滞在という長丁場の仕事だった。現地の制作会社に演出から撮影まで依頼していたのだが、打合せはだいたいランチ前が多かった。監督は朝、サーフィンしてから打ち合わせに来ていた。
これがショックだった。当時、日本でのCM打ち合わせは早くても18時くらいが普通。忙しい監督だと、夜間の編集の合間に時間を取ってもらったりしていたのだ。CM監督がサーフィンをしてから打合せ。なんと健康的なのだろう。そして、なぜ東京ではこうはいかないのだろうと初めて思った。
そして夕方、二つ目のショックを受ける。いくつか打合せを終えて、ホテルに向かう途中のダウンタウン。そこかしこのスタンドバーで現地のサラリーマンらしき人々がビールを酌み交わしている。通訳の人に聞くと、残業しない人が多く、しかもバーには一人で来てると。え？ 一人って、けっこうしゃべってたけど、、、。
一人で来て、そこで会った誰かと話をする。深酒はせず、サクッと家に帰り家族と夕飯。驚いた。これも東京とは違う。なんかそっちの方がカッコよくないか。僕の価値観を変える事件だった。それ以来、夜の仕事は避けるように。その分朝早くから仕事をした。シドニーのお陰で、その後のスタイルが決まった。感謝感謝。
