好き嫌いは少ない方だと思う。しかし一個だけ、どうしてもいまだに食べられないものがある。こんにゃくだ。こんにゃくについては、あらゆる面でNGだ。まずは見た目。妖怪ヌリカベにしかみえず、とても人間が食べるものには思えないのだ。そして食感。これが最もダメだ。何とも気味の悪い弾力。想像しただけで気分が悪くなる。
さらにネーミング。こんにゃく、の、「にゃく」がダメだ。気色悪い。というわけで、こんにゃく以外は、大人になるにつれて食べられるようになった気がする。子どもの頃、全然食べられなかったのに、いまでは大好きになったものは人参だ。子どもの頃は、あの香りも味も全く受け付けられなかった。
そんな僕に母は言っていた。「乃木将軍が子どもの頃、人参が嫌いと言ったら、その日以降、弁当のおかずは毎日人参になった。そしてのその後、人参が大好物になった」。これを聞いて子どもの頃の僕は真から恐ろしくなった。弁当が毎日、人参弁当になったら地獄だと。なので泣く泣く我慢して人参を食べていた記憶がある。
ところがいつの間にか大好きに。よくカナッペにして食べているが、まったく飽きない。あの苦手だった臭みさえ、いい香りに思えている。我ながら不思議だ。よく味覚は年齢とともに育つというが、そのせいなのだろうか。単に鈍感だったのだろうか。でも、こんにゃくにその変化は起きていない。ていうかずっと起きなくていいや。