フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

タクシーストーリー④

TAXi? (字幕版)

バブル崩壊数年後の話だ。まだ深夜タクシー帰りが続いていたころ。その晩の運転手には、乗車のときからなんとも言えぬ余裕を感じた。静かにゆっくり最小限の言葉だけ話し、わずかな笑みを浮かべる。まあ静かな運転手は歓迎だ。ゆっくり休めるからな。。。と思っていたのも最初の5分ほどだった。

 

「お客さん、サラリーマンじゃないよね?」 突然、運転席から尋ねられた。「いや、スーツ着てないからさ」と。自分は広告制作の仕事をしているのでスーツは着ないと説明した。「大変だねえ、こんな遅くまで。いくらもらってるの?」 これはさすがに適当にごまかすと、「株やってる? バブル終わったいまだからこそ、株やんなきゃ」。

 

そこから到着まで、にわか株式投資の講義となった。当時30代前半だった自分。もちろん株式投資の知識も資金もなかった。卵はひとつの皿に盛るな。人の行く裏に道あり花の山。もうはまだなり、まだはもうなり。などなど。すぐには理解できないが、コピーライター的には興味をそそられる投資金言が出てきて面白かった。

 

家が近づくと、最後にプレゼントをくれると言う。「あんた若いからどの株買えばわかんないだろ。単純にその株だけを売り買いすれば間違いなく利益が得られる銘柄があるんだ。X社さ。冬に買い、夏に売れ」。にっこり笑って運転手は言った。信じなかった。が、10年くらい過ぎたころ、思い出して試しに一度だけX社の株を買ってみた。確かに小遣い程度だが儲かった。御礼を言いたいがもう会うことはないよなあ。