大学院の授業で、ちょっとした研究テーマのプレゼンの日であった。順番はあみだくじで決めるということだったのだが、なぜか一番手を引いてしまった。くじ運の悪さには自信がある。その準備で昨夜は久しぶりの夜なべとなった。一夜漬けかよ(笑)。というか、最後のまとめに時間を喰ったのだ。面倒だし眠いしで、重い腰を上げて夕飯後からキーボードを打ち始めた。
30分もすると、流れが良くなってきた。頭が冴えてきたのだ。考えが素早く整理され、文が前へ前へと進む。心地よく作業がはかどる。俗に言う、ゾーンに入った感じ。心理学でフロー体験を学んだ。意識がバランスよく秩序づけられた時の心の状態を言う。この状態を常に保てれば、物事がうまくいきやすいわけだ。難しいけれどもね。茶道や弓道など、日本の作法や武道で習得しやすいらしい。
僕は高校時代、弓道部に所属していた。この弓道、やってみると実に奥深いのだ。まず、的に当てに行ってはいけないと教わる。的には結果として当たるのであると。矢を放ってはいけない。放たれるのを待てと。何だか禅のように聞こえるだろう。しかし、やってみると腑に落ちるのだ。弓道は所作がすべてである。所作を全うするには、心の状態をフラットにせねばならない。
邪念の無いフラットなゾーンに入ったとき、所作は完全に美しく、矢は自然と離れる。難しいのだ、これが。まさに修練である。ただし誰でも、いつかゾーンに入る瞬間を体感できる。それを覚えておくために「型」=所作が役に立つ。昨夜のデスクワークは、久しぶりにゾーンを思い出せた。心理学は説く。いかに遊に従って生きるかが、フローの鍵だと。ここちよく、無邪気に、真摯に遊べ。これが一番難しい。