本は書名次第で売れ行きが変わる。有名な話としては「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」だ。中身は身近な会計学について書かれているのだが、ユニークな事例としてのさおだけ屋に着目した編集者の勝利だろう。「あなたに身近な会計学」では売れるとは思えない。特に新書は、工夫された署名が多い。
また、一回当たった書名はしばらく流行することも多い。ずいぶん前、「〇〇の達人」といった本がやたらと出たときがあった。要は便乗だ。ヒット作の余韻で、そこそこ売れてしまうのかもしれぬ。最近読んで面白かったのが「家族のトリセツ」である。2019年に「妻のトリセツ」でベストセラー作家となった黒川伊保子氏の続編だ。
この「トリセツ」も御多分に漏れず、多くの応用本が出ている。Amazonで「トリセツ」とググると出てくる出てくる。「看護のトリセツ」「宅建士のトリセツ」「足のトリセツ」「腸のトリセツ」「英文法のトリセツ」「マンション管理のトリセツ」「あの世のトリセツ」「副業のトリセツ」、、、。
しばらく「トリセツ」ブームはつづきそうだ。黒川氏の本が優れていたのは内容が素晴らしいのはもちろんだが、「トリセツ」と片仮名にしたところではなかろうか。短縮&片仮名になった時点で、言葉は呪文化する。視覚にも聴覚にも心地よく残る。何と言っても手軽に濃い内容が読めそうな気分になる。トリセツ、パワーワードだ。