フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

やっこさんは愛だ

サザエさん うちあけ話

1920年1月30日が長谷川町子さんの誕生日。なので先日、生誕100年を迎えたんだそうだ。アニメのサザエさんも一時間の特番だった。前半の30分が、長谷川町子さんの旅行記で、これが何とも味わい深かった。お母さんとの珍道中で、女性旅ならではのエピソードに大笑い。マンガ連載中は多忙だっただろうから、旅行くらいしかのんびりできなかったのかもと想像する。

 

見ていて、お、と思ったことがある。ところどころで出てくる、昭和ならではの言葉だ。ニュージーランドの旅でのこと。牧羊犬のショーを見学した町子さん。犬の立派な働きぶりに関心するシーンがあった。そのとき、犬のことを「やっこさん」と言った。懐かしい。「男性が同輩またはそれ以下の男性を親しみをもって、また多少軽んじて呼ぶ語」(三省堂 大辞林より)

 

「あいつまた遅刻だよ」「やっこさんのこった。いまごろ約束なんか忘れて飲んだくれてるにきまてら」みたいなやり取り。昭和の日本映画、会社コメディなんかでよく聞いたフレーズだ。人間並みに働く犬を、ちょっとからかい気味に「やっこさん」と呼ぶセンスがここちいい。昭和の時代は、まだ人間づき合いが良い意味でも悪い意味でも濃かったと思う。やっこさん、には人間愛を感じて、しんみりした。

 

長谷川町子さんの庶民を見る目はやさしい。特にサラリーマンへの目線にそれを感じる。帰り道、ついくぐってしまった赤ちょうちん。ほんの一杯のつもりで飲んで、いつの間にやらはしご酒の、マスオとアナゴさん。恐妻家のアナゴさん、無理やりマスオを家まで招き入れ、さらに妻の怒りを買う。なんてこと令和の時代にゃありゃしない。帰りがけ、マスオは思うだろう。「やっこさん、いまごろ土下座かな」。愛だなあ。