フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

三木鶏郎を楽しむ

冗談音楽の怪人・三木鶏郎 :ラジオとCMソングの戦後史 (新潮選書)

よほどの物好きでないかぎり読まないだろうし、特にすすめる気もないが、この本はとても楽しめた。実はいま、戦後のCM隆盛期について資料を集めてはこつこつ読んでいるのだ。デジタルトランスフォーメーションの時代に、アナログ満載の広告づくりが何とも人間臭くて面白い。できればタイムカプセルで昭和20~30年代に行って、広告づくりに参加したくなるほどだ。

 

三木鶏郎、広告の仕事に携わる50代以上の世代なら一度は名前を聞いたことがある才人だ。ミツワ石鹸、ポポン、ルル、キリンレモン船橋ヘルスセンターなどの名作CMソングや、鉄人28号ジャングル大帝など名作アニメの主題歌など、その多作ぶりは伝説となって後世まで語られる。なかでもゲバゲバ90分は、僕がテレビ番組で一番好きなもの。その総監修も彼。僕にとっては雲の上の上に位置する、神さまみたいな人だ。

 

彼のことは作品では知っていたが、この本ではじめて人生を知り、さらに好きになった。戦後の混乱期に、コントに音楽を取り込んだ独自の冗談音楽がラジオで大ヒット。伝説の聴取率90%番組「日曜娯楽版」を育て、そこから、三木のり平丹下キヨ子、河合坊茶など続々スターを輩出したと。まあ、なんつうか秋元康もびっくりの天才クリエーターだったのだ。

 

著者の泉麻人さんは、僕より一世代上の大先輩。昭和の東京にめっちゃ詳しいエッセイストだ。昔、某雑誌で「おみず探検隊」というコーナーを持たれていて、田舎の店先などに残っている水原弘のハイアースのホーロー看板を探すというドキュメントが好きで、それ以来ファンになった。この本も細かく知らべ上げられていて読み応えあり。三木という名がミッキーマウスからつけられたと知り、ニヤリとしてしまうなあ。