2000年前後だったと思うが、イタリアをクルマのCMの撮影で複数回訪れた。当時は円が強くて、海外ロケが推奨されていたころ。しかも新車は秘密保持のために海外での撮影がマル必であった。期間もロケハンやロケも入れると最低2週間、下手すると3週間は滞在していた。いい時代だったのだ。
となると、連日食事はイタリアン。否が応でも、イタリアン好きになってしまった。なかでもワインには思い入れがある。フランスより価格が安いのに、味わいは引けを取らない。というか僕的には超えていた。トスカーナの肥沃な土地(terra)と寒暖差のある気候は美味いワインが生まれる条件を満たしている。
なのでロケが終わるときには必然的にワインを買うことに。トスカーナで撮影し、空港のあるミラノに戻ると、ワイン店に直行。店主にオススメを尋ねた。そこで一押しだったのが、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノだった。価格がイタリアワインにしてはちょっと高かったが、ラベルのデザインに気品があって気に入った。
ミラノ・マルペンサ国際空港に着き、出国手続きをしている最中にちょっとした事件が起きた。突然、警察が手荷物検査場に入ってきたのだ。なんと空港荷物に爆弾を仕掛けたとの脅迫電話があったとのこと。出国する外国人も含め、全員の手荷物を抜き打ち検査するというのだ。
もちろん、僕の荷物に爆弾なぞない。なので早いとこ見てもらって手荷検査場を通過したいと思っていたら、鼻の下に立派な髭をはやした警官がやってきた。そして僕のスーツケースと手荷物を調べ始めた。そこで僕が買ったブルネッロを見つけて彼は言った。「君は正しい買い物をした！このワインは素晴らしい」と。それ以来、メモリアルな日はこのワインを飲むことにしている。グラッツエ、ポリツィオット！
