フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

おのおの抜かりなく

人生に必要な知恵はすべてホンから学んだ (朝日新書)

真田丸なつぞら、と草刈正雄に魅了された一人である。あのバタ臭い顔が、いつの間にやら日本人のハートをわしづかみにしてしまった不思議。その秘密が知りたくて、図書館でこの本を借りて読んだ。タレントによくある、インタビューをまとめたものだったが、実に面白かった。本の半分がインタビュー、残りの半分がドラマの名セリフの解説だ。この構成も珍しい。ドラマを思い出しながら楽しめる。

 

草刈は50年代始めに、福岡県小倉に生まれる。父は米兵、母は日本人なのでハーフである。父は朝鮮戦争で戦死し、幼いころから母子家庭として育った。母は鬼のように厳しく(笑)、この世で一番恐ろしかったと振り返る。僕も九州出身なので分かるが、九州男児などと言われるけれどその実、完全にかかあ天下なのである。草刈のような大男も母には頭が上がらなかったというのは笑えた。

 

彼はすべては運のお陰であると謙遜する。たまたまモデルに採用され、たまたまCMがヒットし、その流れで俳優もどきになったと。しかし、30代になると世間から飽きられ、道を悩む。そこでも運が道を開く。映画で共演した沢村貞子から舞台を勧められるのだ。僕は常日頃から運・縁・勘がすべてと考えている。草刈もそれに近い考え方だったのかもしれない。舞台で演技者の喜びを知る。

 

それまでの草刈は自分とはかけ離れた二枚目やエリート、成功者、金持ちなどの役がほとんどだった。しかし本当の自分はむしろ三枚目のチキンハート。舞台は、その地の部分を演じることができた。それが後に三谷幸喜につながる。確かに「運」だ。もちろん影の努力はあっただろうが。真田丸で真田昌行は言う。「では、おのおの、抜かりなく」。60代のいま、草刈は抜かりなく青春を謳歌しているようだ。