フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

ベイシー再訪

ジャズ喫茶ベイシー読本 BASIE 50th Anniversary (別冊ステレオサウンド)

大学二年生の頃、文学部の友人と三人で、岩手県一関市に旅行に行った。彼の地に帰郷している彼らの同級生を訪ねがてらの東北旅行だった。その同級生の家は酒屋さんで、ご両親から熱烈歓迎された想い出がある。料理も美味しかったが、なにせ酒屋なので酒は売るほどある。お父さんが秘蔵の酒などガンガン出してくる。

 

ところがこのお父さん、酒屋の主であるのに、酒に強くなかった。飲みだしてしばらくするとろれつが回らなくなり、しまいには同級生に別室に担ぎ出された。いやはや、東北の方たちはみんな根っから良い人ばかりで、このお父さんは代表格だろう。息子の同級生が来てくれて、本当にうれしかったようである。

 

翌日、一関市を案内してもらった。有名な渓谷などを廻り、今回のお目当てであるジャズ喫茶・ベイシーを訪れた。ベイシーは蔵を改装して作られたお店で、音響が素晴らしいと、ジャズファンの間では伝説の店であった。当時、ジャズにハマっていた若造の僕には、感動で震えてしまうほどの店だ。ここでの記憶は一生の宝物である。

 

何とこのベイシーが、この秋、映画となった。フジテレビの社長を務めた亀山千広氏がプロデュースを務めているドキュメント映画だ。ジャズ喫茶が映画になるのか? なるのである、ここ日本では。世界広しと言えど、音楽喫茶がライブハウスを越えて映画になってしまう国はないだろう。ライブを超えるものが、あるからだ。

 

ジャズ喫茶と言えば二人の人物が浮かぶ。一人は吉祥寺でファンキーを始めとする伝説の店を数多く生んだ、故・野口伊織。そしてもう一人が、この一関ベイシーを生み、いまも経営している菅野正二だ。野口がジャズの楽しみを表現したとしたら、菅野は徹底して音質にこだわったと言えよう。ああ、映画が楽しみだ。ウン十年ぶりの再訪だ。