正確のいいチンピラ。みたいな印象を、このハイラム・ブロックにはずっと思っていた。その昔、ちょい悪だけどやたら子どもには優しいあんちゃんが町内に一人はいた。定職につかず、バイクを乗り回しては親から怒鳴られているが、近所の子には遊びを教えてくれる。そしてその遊びが天才的に上手かったりする。
例えば蝉取りだ。九州では竹竿の先にトリモチを付けて蝉を狩る。これ、上手にやらないと蝉に気づかれるし、強引にやると蝉にトリモチが付き過ぎて商品価値(笑)が下がる。あんちゃんは竿さばきが絶妙で、ソフトタッチで一発で捕える。トンボ釣りとかも上手い。器用に投げて、すいすい捕まえる。そして子どもに配る。
もちろんハイラムは蝉やトンボは相手にせず、ギターをすいすい弾きまくる。その表情は、ちんぴらあんちゃんそのものだ。好きでたまらんことを、スイスイやるから笑顔になる。いばらないし、何かを望まない。欲がないから母ちゃんから怒られる、ことはないか(笑)。テクニックは誰もが認めるけれど、脂ぎってない。
本アルバムは、最初から最初までスムーズだ。心地よいギターワークやロマンチックなボーカルが滞りなく流れていく。良きにつけ悪しきにつけ、80年代っぽいイージーさ。これが軽すぎ、と思う人はフュージョンは苦手だろう。それでいいのだ。町のあんちゃんは、近所のガキ(僕)にさえ受ければいいんだもん。