フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

大工と大家の財政事情

カラー版 江戸の家計簿 (宝島社新書)

ひ、ふ、み、よ、いつ、むう、なな、やあ、オヤジ、いま何時でい? とくれば落語の時そば。僕は昇太の時そばが大のお気に入り。何度で見ても爆笑してしまう。あまたいる噺家のなかでもダントツの面白さである。ここで登場する蕎麦が十六文蕎麦なのだが、現代だと幾らくらいになるかご存じだろうか? 取り上げた本には、この蕎麦の値段をはじめとして、江戸時代のさままざまな価格を紹介していて面白い。

 

あまり価格を話してしまうとネタバレになってしまうので、少しだけ紹介しておこう。同じく落語で言えば、代表的な登場人物は貧乏長屋の住人たちと決まっている。究極は、大工と大家だ。で、たいがい大工は家賃を長らく払わずため込んでいる。腕はいいのだけれど、酒に弱く仕事をさぼりがち、ってえのが典型的なキャラだ。大家はというと、口うるさくてドケチだが、実は人情家ってところ。

 

さて大工の給料だが、これがけっこう高給で驚いた。日給2万7千円。年収793万円だそうだ。江戸は火事が多く、大工は年中引っ張りだこ。大火事になると給料は高騰したらしい。だから、ふだん飲んだくれて寝ていても、いざ働き出すと借金も返せてしまう。落語で改心した大工が、わりとすぐに借金返したり財を成したりするのが不思議だったが合点がいった。

 

では大家はどうか。長屋の家賃が月5千円から7千円で、大家の取り分は家賃の3~5%と共同便所の糞尿の売買代金というから、あまりたいした額じゃない。なのに仕事はけっこう大変だ。長屋の管理にもめごとの仲裁、家賃の取り立て、冠婚葬祭の取り仕切りなどなど。これじゃあ口うるさくもなるよなあ。価格が分かると、物語のリアリティがぐんと増す。おすすめの一冊だ。ちなみに十六文蕎麦は270円。富士そば価格(笑)。