先日、親しい友人たちと家族とで近所のイタリアンレストランに行った。長年通ったお店だが、残念なことに今月末で閉店となってしまうと聞き、集まったのだ。いつもながら料理もワインも美味しく、楽しく別れを惜しんだ。店は2階もあるのだが、階段の壁に気になるものを見つけた。
写真の犀(サイ)の版画ポスターだ。店長と話したら、店は解体してしまうと言う。ということは、あの犀の絵はどこへ? 思い切って店長に「もし処分されるのなら譲ってもらえませんか」と尋ねると、「もちろん」とのお答え。その場ではがしていただくことができた。
持ち帰って調べてみると、いくつか面白い事実が分かった。このポスターはイタリアの人気ワイナリー「La Spinetta」のもので、犀はシンボルマークなのだった。このワイナリー、誕生は2001年と比較的新しい。トスカーナのローカルな品種とバローロとのミックスで人気を集めているらしい。是非飲んでみたい。
そしてこの犀の木版画はドイツのルネサンス期の有名な画家、アルブレヒド・デューラーによるものだった。1515年に制作されたものだそうだ。当時、ヨーロッパに犀は持ち込まれたことはなく、1515年初めにインドからリスボンに運ばれてきたものを、誰かがスケッチ。そのスケッチと説明書きを元にデューラーが想像しながら描いたとのこと。
その後18世紀末まで、この絵が犀の説明としてヨーロッパ中で使われていたという。実際とは違うところが色々ありそうだが(笑)。「La Spinetta」社がこの犀をマークにした理由は、独自のワインづくりに邁進するイメージを犀の突進に重ねたのだとか。想いと歴史を込めたポスターは勢いよく突き進み、いま我が家の壁にとどまっている。