子どもの頃の一番の愛読書は昆虫図鑑だった。最初はバッタに夢中になった。トノサマバッタ、ショウリョウバッタ、オンブバッタ、キリギリス、クツワムシ、などなど。とにかく、図鑑で見たものをこの目で見て、手に入れたかったのだ。まあ、狩りの本能ですかね。そしてセミ、トンボ、やがて甲虫へと関心が移っていく。
少年期における甲虫と言えば、カブトムシやクワガタとなるわけだが、一通り捕まえてしまうと、これもつまらなくなってくる。ひねくれ者なので、誰もが手に入れやすいものは飽きてくるのだ。で、そこからはカミキリや、玉虫、カナブン、ハナムグリとマニアックな方向に興味が移っていった。形より色彩や動きが変な甲虫に。たぶん、まだ見たことのない変わった虫の方がそそったのだと思う。
カミキリや玉虫は、身体の色彩が美しいものが多い。ルリボシカミキリやゴマダラカミキリの青はとても爽快だったし、玉虫の虹色は生き物とは思えないファンタスティックな輝きだった。ここらへんを苦労して採集できた日は、酔っぱらった感じになり、日がな眺めてはトローンとしていた記憶がある(笑)。ある種の合法ドラッグかな。
そして最後はどうしても見ることができない、手に入りにくい虫に気持ちが動き出した。通称へっぷりむし。正式にはミイデラゴミムシだ。これは危機に陥るとお尻から高熱のガスを発する甲虫。この発射を見てみたい、と思い探し回ったら、ある日ついに発見。おそるおそる、棒でお尻を叩くと、、、。ボンッという音と共に、煙が出た。ガスだ。感動した。ホントにガスが出たことに。僕にとって、この一発は一生忘れられない一発で、大事な記憶のひとつなのだ。