フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

大師匠か小師匠か

THE 小さん(DVD付)

3月末で、25年間働いた前職を退職した。多くの皆さんから労いのメールをいただきありがたいかぎり。様々な仕事の思いでが蘇り、懐かしさと寂しさと達成感が入り混じった不思議な時間をいただいた。そのなかで多くの方からもらった言葉に、とにかく僕との仕事は打合せが楽しかった、というのが多かった。そりゃそうだ。僕自身、打合せ時間ほど面白く楽しい時間は無かったからだ。

 

その昔、自分がディレクターに昇格となったとき、上司に飲みに誘われた。これはお祝いだな、と勝手に解釈しウキウキしながら指定の店に向かった。上司はコピーの鬼であり、口は少ないがコピーにはうるさい人だった。若手でガヤガヤ企画していて、その人が部屋に入ってくると、皆ピリッとして静かになった。落語界では、楽屋に入ってくると静かになる師匠を大師匠というと聞いた。まさにそれだ。

 

飲み始めてしばらくしても一向に会話が弾まない。仕方なく、僕が直近の仕事の話などし始めたら、突然その上司が声を荒げた。「ディレクターになってもいばるんじゃない!」と。え、あの、いばるつもりは、、、。「ディレクターは偉い立場ではない。勘違いはするな!」と続く。そうか、今日はこれを僕に言いたかったのだと合点がいった。上司はそれだけは言っておきたかったのだ。

 

僕はとても上司のような才能は無く、ディレクターとしては普通の人であったと思う。しかし、あの時上司から言われた言葉だけは守った。いばらず、盛り上げ、皆平等に格闘した、つもりだ。結果として「楽しかった」と言われたとしたら、少しは教えを守れたのかもしれぬ。昨年、その上司は静かに天に召された。僕は彼のような大師匠にはなれなかったが、小師匠の良さを教えてもらったのだろう。感謝。