某元総理のコメントには全世界が面食らった。いやはや時代錯誤もいいところである。僕が特に驚いたのは「わきまえる」という言葉を使っていたところだ。記者の「何をわきまえるのか」という更なる質問に、「場所や時間やテーマを」との答え。それらをわきまえる、というのは単なる承認会議を指しているのだろうか。
僕は2つの広告会社に勤めた。一つ目は外資系、二つ目は純日本系。20年以上前、二つ目に転職したときに所属局長さんから質問された。「君は広告づくりをどう考えてるの?」 え、いやその、何と言いますか、、、。必死で、一つ目の会社で言われたことを思い出した。あ、あれだ。アイデアをつくる枠組みのことだ。
「はい、プロレスで例えると、リングのなかで暴れまくるつもりです」と答えた。広告はビジネス。ただ自由奔放にアイデアを作れば良いのではなく、一定の制約のなかでベストを尽くせと言われていたのを思い出したのだ。我ながら優等生の答えができたのでは、とホッとして局長を見る。すると満面の笑みで局長が言った。
「ああそれじゃうちではダメだ。リングから出て場外乱闘に巻き込んで戦わないとね」と。ガツンと胸に刺さった。いい会社に入ったと思った。そうなのだ、わきまえていてはイノベーションは生み出せない。それ以来、局長の言葉は宝物となった。一度の人生、わきまえている場合ではない。暴れよう(笑)。