その町に住む条件は何だろう? 仕事や学校、自然や文化など人それぞれ理由があるはずだ。僕はそれほど大きなこだわりはないが、まずは公園と図書館がまず思い浮かぶ。あとは面白い商店街があれば最高だ。いま住んでいる町はそれをクリアしているが、実は他でとても離れられない好条件がある。鶏肉屋だ。
八百屋、魚屋、肉屋、豆腐屋、花屋、どれも重要だが、鶏肉屋をあげる人は少ないかもしれない。いまの住まいの近くには鶏肉専門の古い肉屋がある。鶏肉専門、というところに価値がある、僕にとっては。好きなのだ、鶏肉が。特に砂肝とレバー。そして手羽先。写真の手羽先は一個70円である。これがあればつまみは要らぬ。
10年前は50円だった。じわじわと60円、そして70円まで来た。でも許す。美味しいから。こればかりは大手スーパーでは買うことはできない。から揚げ屋は増えたが、手羽先屋は近辺にはない。そしてこの手羽先、肉の量がたっぷりで食べ応えがある。世界の山ちゃんみたいな貧弱さはない。そして味付けもマイルドだ。
この鶏肉屋、数年前まで店頭で焼き鳥も売っていた。先代の主人が焼いていたのだが、彼が引退したようで、それとともに焼き鳥販売は終了に。心配だったのは手羽先もなくなるのでは、ということだった。しかしどうにか生き延びた。この手羽先がある限り、この店がある限り、この町に住み続けるつもりだ。さあ買いに行くか。