フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

幕末に太陽あり

幕末太陽傳 デジタル修復版 Blu-ray <川島雄三生誕100周年記念エディション>(完全限定版)

大学院の講義で、川島雄三監督について学んだ。以前より、「幕末太陽傳」だけ見ていて、監督というより作品として好きだったので興味深く講義を聞けた。レポートを出すために、あらためて太陽傳を見た。やはり面白い。フランキー堺の丁々発止と躍動感ある体の動きには惚れ惚れしてしまう。今回は、作品の背景や、監督の情報を得ての鑑賞だったので余計に楽しめた。

 

この太陽傳、何と言っても古典落語が下敷きになっているのがストーリーを盤石にしていると思う。居残り佐平次をベースに、お見立てで締めくくるなぞ、よくもうまくまとめ上げたものだ。さらに幕末を絡めて、時代の変動もストーリーにダイナミズムを与えている。大ピンチを、大チャンスに。主人公は、頭脳をくるくる回して前に進む。見ている方も、調子に乗りたくなる。

 

制作年は1957年。朝鮮戦争の特需から、さらに神武景気へと日本経済が飛躍する最中である。終戦後10年で、世界が驚く奇跡的な高度成長へ走り出すスタートラインだ。まさにロケットスタートなみの勢いであったであろう。太陽族とは、1955年に石原慎太郎が書いた小説「太陽の季節」から取ったものらしい。既存の秩序を無視して、奔放に行動する戦後の若者を称した。

 

そのせいか、太陽傳には高杉晋作役で、前年に「太陽の季節」デビュー仕立ての石原裕次郎も出演している。ちょっと高杉晋作っぽくはないけれど、仕方あるまい。フランキー堺の前では、ただの青二才だ。まぶしく見えるのは何と言ってもフランキー堺。天才とはこういう人を言うのだろう。監督の川島も天才肌だったが、45歳で早逝している。二人の才能のきらめきは、今見ても色褪せないなあ。