フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

てんやわんやを活力に

てんやわんや [VHS]

今日も大学院の課題である古い日本映画を見た。渋谷実監督の「てんやわんや」だ。監督はもちろん、作品もまったく知らなかった。1950年の作品で佐野周二淡島千景が主演だ。東京の出版社の社員である二人。社ではワンマン社長をめぐり、ストライキの最中。ほとほと東京での騒々しい生活に疲れた主人公はひょんなことから社長の命を受け四国の田舎町へと行かされる。そこには何とも不思議な出来事が待っていた。。。

 

当時の人気作家・獅子文六の原作だそうで、風変わりな地方のエピソード満載の喜劇映画である。まだ戦後間もない四国の田舎町の風景がとても感動的だ。残念ながら白黒だが、海も山も川も、ふんだんに出てくるその姿はため息が出てくるほど美しい。東京と言えば外国くらい遠かった時代。地方とのギャップをドキュメンタルな映像も織り交ぜながら描く渋谷監督の力には感心してしまった。独特のセンスだ。

 

淡島千景はこの映画がデビュー作。後の「麦秋」や「夫婦善哉」などに隠れて、「てんやわんや」は知名度は低いのかな。淡島はデビュー作とは思えぬ肝の据わった演技を見せる。しかし僕が気になったのは桂木洋子だ。めっちゃ美しい。後に作曲家の黛敏郎の奥さんになったらしいが、うなずける。何とも品があるのだ。映画では山に住む謎の娘を演じているが、さすがにこんな美女は山にはいないよな、と思った(笑)。

 

音楽が凄い。あのゴジラのテーマを作った名作曲家・伊福部昭なのだ。オープニングシーンの音楽は、ゴジラのテーマを彷彿とさせる独特な怪しいメロディで、その後のまさに「てんやわんや」なストーリーを予感させる。贅沢と言えば贅沢なマッチング。それにしても戦後の日本の活力はたくましいな。どん底までいったら、あとは這い上がるのみ、といった良い意味でのポジティブさを映画から感じる。あの活力をコロナ後には見習わうべきかも。てんやわんや、はチャンスなのだと。