フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

共感覚からの上原ひろみ

Spectrum (初回限定盤)(2SHM-CD)

共感覚のことを以前書いた。本を読んでみると、僕は数字に色を感じるのだが、音に色を感じたり味に形を感じたりする人もいるそうだ。で、上原ひろみ、10年ぶりのピアノソロ発売のニュースだ。テーマは「色彩」。白と黒の鍵盤で、計9色=9曲を「音」でペイントしている。まさに共感覚そのもの。18日の発売と同時に購入したのは言うまでもない。

 

7曲の書下ろしと2曲のカバー。それぞれ、色彩を題材にしている。一曲だけ「ミスターC.C.」という曲があり、題名からでは色が分からなかった。インタビュー記事を読んだら納得。C.C.はチャップリンのこと。彼がモノクロ映画の中で、多様な表現=「多彩」を生み出していたところが、白と黒の鍵盤で演奏する自分に重なったのだそうだ。

 

上原ひろみを知らない人も多いと思うので略歴を少し書く。2003年にジャズ・ピアニストとして世界デビュー。2011年、スタンリー・クラークとのプロジェクト作品で第53回グラミー賞受賞。2016年には全米ビルボード・ジャズ総合チャートで1位を記録するなど、いまや押しも押されぬジャズ界のスターピアニストのひとり。

 

以前のサウンドは、アグレッシブさが前面に出ていて、圧倒的な熱量と独自性が魅力だったが、今回はそこに優しさやユーモアも加わった気がする。一曲一曲聞き応えがあり、充実した色絵巻といった印象。個人的には、大好きな原曲を美しくアレンジした「ラプソディ・イン・ヴェリアス・シェイズ・オブ・ブルー」が秀逸だった。秋の夜長、この一枚が人生を少しだけリッチにしてくれる、はず。