フンコロ式でいこう!

まあ取り合えずコロコロ転がしてけば大丈夫、かな。

確定申告やっとこさ変化

自分でパパッと書ける確定申告 令和3年3月15日締切分

昨年、母の手術など医療費がかかったので、久しぶりに確定申告することにした。いまのところまだサラリーマンなので、年末調整で済むのだが、何年かにいっぺんやることになる。前回は3年ほど前か。マイナンバーカードを自宅から読ませて申告できると聞いてやってみたら、クロームは受け付けないやら、平日の日中しか受け付けないやら、もちろんスマホなど門前払いやら(笑)。やれやれ。

 

今回は「スマホでもOK」とうたっているので少しだけ期待する。しかしである。これまで何度も期待を裏切られてきたE-TAXだ。期待半分に気持ちを抑えて、サイトを覗いてみた方がいいと自分に戒める。おそるおそる入ってみると、確かに楽であった。3年前とは格段の差がある。OSもクロームだろうがMacだろうがOK。スマホでもできるらしい。やってないけれど。

 

一番面倒な医療費の記入も実にスマートだった。やればできるじゃないか国税庁。もしかしたらこれも河野行政改革大臣のおかげなのだろうか。その昔、住民基本台帳カードの頃は大変だった。限られた時間、限られたOS、限られたカードリーダーでしか前に進まず、且つ、すぐにバグった。何度も苦労して申告し、やり直しであらためて紙で再申請したこともあったなあ。。。

 

昨年来、やっと日本の行政の超ガラパゴス&アナログシステムにメスが入り出したのは遅ればせながらありがたい。なぜかお上は、一番古いシステムに基準を合わせるのが「思いやり」であり「節約」にもつながると考えてきた節がある。それがコロナや五輪という世界レベルの大波によって、やっと転換に向かったわけだ。黒船のときから変わらぬ外圧頼みが露見したなあ。周回遅れだけど良しとしよう。

 

 

龍子と出逢った

生誕120年 川端龍子展〈図録〉

川端龍子を知った。朝日新聞の夕刊の美の履歴書で「爆弾散華」という作品が紹介されていたのだ。これにショックを受けた。かぼちゃやトマトなどの野菜が突風に吹き飛ばされている。美しいし、実にカッコい。が、その突風の原因は爆弾だと知ると話は違う。描かれたのは1945年8月と知るとさらに違う。

 

これは第二次大戦の終戦間際に描かれたものだという。題名の一部、散華とは戦死を意味し、且つ仏教で花をまいて供養する意味であるらしい。終戦の2日前の8月13日、川端の自宅が爆撃を受け、使用人2名が亡くなった。野菜を育てていた畑も、野菜ごと吹き飛んだ。それらを絵にしているのだ。鎮魂の意味があったのだろう。

 

龍子と書いて「りゅうし」と読む。男性である。彼の絵は会場芸術と呼ばれ、大型であることが特徴だ。数メートルもの大きな作品が多い。テーマも海や合戦、植物、動物、いずれもダイナミックで且つ繊細。そしてどこかユニークに感じる。元々が挿絵画家だったことや、最初は渡米し洋画家を目指していたことも要因かもしれぬ。

 

図書館で作品集を借りてみた。子どもの頃、鯉のぼりの絵描きに憧れて、絵の道に入ったという。なので、鯉の絵をけっこう描いている。いずれも素晴らしい。僕は鯉の絵が大好きだからたまらない。浮世絵の鯉は沢山見たが、龍子の鯉は浮世絵よりも生々しいのだ。大田区に龍子美術館があるので、近々行ってみよう。楽しみ楽しみ。

さよならチック・コリア

チック・コリア&ゲイリー・バートン・イン・コンサート

チック・コリアが亡くなったとのニュースを知った。え、まだそんな年ではないだろうと驚いたが、ガンと闘病していたらしい。ミュージシャンは、その音を聴いたり、見たりしたところで本人イメージがロックオンされてしまう。僕にとっては80年代、フュージョン喫茶で聴きまくったころのチックの姿で留まっていたのだ。79歳なら天寿を全うしたともいえるのだろう。とても寂しい。合掌。

 

チックと言えば僕の中ではリターン・トゥ・フォーエバーのチックと、ゲイリー・バートンとのコンビでのチックに尽きる。ソロ作品も素晴らしいのだが、好きなのはグループやコンビでのチックなのだ。特にゲイリーとのコンビネーションが最高であったと思う。写真のチューリヒでのライブ盤は何度聴いたか分からない。心が澄み渡り、汚れが全部身体から抜けていくアルバムだ。

 

偶然だが今日、図書館に予約していたCDが入ったと連絡が来て、そのうちの一枚がチックと上原ひろみのデュエットアルバム、その名も「Duet」(2007年9月ブルーノート東京でのライヴ録音)だった。早速聴いてみた。大御所と新星のコラボレーションは、予想通り美しい織物であった。そう、チックはソロよりも相手とのコミュニケーションで織りなす色彩創造の天才なのだ。

 

上原のアグレッシブなタッチの音色を、余裕で広く受け止めながら、新たな交響を生み出していく。ゲイリー・バートンとのコラボレーションが類まれなる浄化サウンドを生み出したのに対し、上原とのコラボはピアノというサウンドの未来を開いていく意志さえ感じ、浄化というより進化に思えた。上原に次を託しているのだ。彼は世を去ったが、上原が次を開いていく。大丈夫、チックはそう思っているはずだ。

案のバランス

和菓子のアン (光文社文庫)

アンが好きだ。家族全員で赤毛のアンのファンなのだ。ファンが高じて数年前、舞台となったカナダのプリンスエドワード島まで行ってしまうほど愛している。そして餡も好きだ。こちらは家族全員ではなく、僕が偏愛している。子どもの頃よりも、50歳過ぎてから何故か餡好きが加速している。

 

歯医者理論という言葉を教えてもらったことがある。歯が痛いと、街を歩いていても他人より先に歯医者の看板を発見すると。気になることほど敏感に察知できるということだろう。最近の僕の場合、それは歯ではなく餡であった。ある時、新聞で写真の本の紹介が目に飛び込んできた。赤毛と餡が一つになってる(笑)。

 

さっそく図書館で借りて読んでみた。作者である坂本司のことは知らなかった。読み出すと、文体のテンポがライトで読みやすい。軽いと言えば軽いが、軽妙と言った方が正確か。18歳の女の子がふとしたことからデパ地下の和菓子屋でバイトを始める。そこで出会う珍客と和菓子の関係、そして秘密。ぐいぐい読ませる。

 

ちょっとしたテレビドラマのような展開だ。和菓子に絡む物語が5つ収録されていて、その変幻自在なストーリーを味わえる。毎回テーマとなる和菓子の由来を知れるのが楽しかった。そして猛烈に和菓子が食べたくなる。いますぐデパ地下に行きたい気持ち満載になる。いや近所の和菓子屋で十分だ。うずうずする。

 

キャラの色分け、味付け、勉強になった。作者はそれらを楽しみながら配置している。読者はそのおかげで、脳内でドラマをダイナミックに再現できる。と感心していたら、これはショーウインドーのなかの和菓子の配置ではないか、と気づいた。手を出したくなるように、巧妙に案を盛り付けている。坂本司、やるのお。他も読んでみよう。

 

ホームレスだがハートレスではない

ホームレス中学生

大学院の喜劇映画の最終講義は、日藝出身監督作品だった。数々の映画監督を排出している日藝のなかでも、若手と言われる監督について解説がおこなわれた。そのなかで講義後に、古厩智之監督の「ホームレス中学生」(2008年)を見てみることにした。言わずと知れた麒麟の田村裕のミリオンセラーが原作だ。アマゾンプライムだと無料だったので、即選んだ(笑)。

 

原作は読んでいなかったが、当時、麒麟の田村がテレビで悲惨且つ笑える実話を語って大うけだったのを覚えている。そのときの可笑しさだけが強烈に記憶にあったので、映画もコメディかと思いながら見始めた。が、違っていた。突然、理不尽な理由でホームレスになった中学生の話は、笑えるというより泣ける話だったのだ。兄役の西野亮廣、姉役の池脇千鶴の三兄弟の何とも健気な物語だった。

 

決してヒットするような映画ではないが、良作だと思う。三兄弟を囲む、関西の大人たちが素敵なのだ。三兄弟を救う友人の両親である宇崎竜童と田中裕子。とくに田中裕子の演技は見ものだ。関西のおばちゃんの心意気を伝えてくれる。民生委員役のいしだあゆみも素晴らしい。こんなに演技がうまいとは知らなかった。三兄弟の両親はイッセー尾形古手川祐子。意外に古手川に泣けた。

 

ここまでの極貧とは比べようがないが、僕も早くから母子家庭で貧しかったのでうなずけるところ多し。一番共感できるのは、若いときは貧しさを越える力がある、ということだ。最低限、雨風しのげれば、若さは苦労を笑える。麒麟の田村がテレビで爆笑を誘ったのも、若さゆえのチカラ。ホームレスだけど、ハートレスではない。映画のラストに、その希望が見えてうれしかった。

浜松妄想

BRUTUS(ブルータス) 2021年 2月15日号 No.932 [音楽と酒。] [雑誌]

先日、浜松への移住妄想について書いた。まあ何というかいい加減な直感で選んだ場所だ。妄想だけに根拠も薄く、あくまで仮で移住サイトなどを眺めて楽しんでいた。ところがである。今日買ったBRUTUSを読んでいたら俄然、浜松移住に心が動いてしまった。今回のBRUTUSのテーマは音楽と酒である。

 

元々ジャズ喫茶を始めとする音楽喫茶やバーが好きな自分。こういう特集が出ると素直に購入してしまう。実際はステイホームで、ただでさえ密なそういう場所には行きにくいのだが、こちらも雑誌の美しい写真と細かい取材文を読んで妄想しながら楽しんでしまおうという魂胆。中身は買って損のない充実の特集であった。

 

こういう特集でうれしいのは、地方の知らない店を知れたときだ。実は東京よりも濃く、渋く、通な店が地方にけっこう存在するのである。つらつらとページをめくっていると、あるページで目が留まる。上原ひろみがバーのカウンターに座っているではないか。。。いま一番好きな日本人ジャズピアニストである。う、美しい。

 

それは浜松のハーミット・ドルフィンというリスニングバー。ライブスペースもある、空間に余裕のあるバーだ。どことなく清潔感があるバーで、僕の好みにはまる。絶対行きたい。さらにページをめくった先に、音楽聴かせる手打ち蕎麦屋naruが出てきた。何とこちらも浜松だ! これは運命か。妄想は構想につながるか。請うご期待(笑)。

81年82年のレコジャケ賛

THE SEPTEMBER WIND 九月の風~通り過ぎた夏

永井博や鈴木英人のイラストを見てグッとくる人はすぐに年齢がばれるであろう。まさに80年代に一世風靡したイラストレーターたちだ。なかでもレコードジャケットやFM雑誌の表紙など、音楽関連で活躍していた。あの頃の日本経済絶好調な空気と絶妙にシンクロしていたのかもしれない。いい時代だったのう(遠い目)。

 

この二人のイラストが採用されたレコジャケでベストは、何と言っても大瀧詠一の「A LONG VACATION」(1981:永井博)であることに異論をはさむ人は少ないのではなかろうか。日本のレコジャケデザインでもトップと言っても良いかもしれない。では2位、3位は何だろう。僕はそのどちらも好きなアルバムだ。

 

2位は山下達郎の「FOR YOU」(1982:鈴木英人)だ。収録曲の「LOVELAND, ILAND」はサントリービールのCMに起用され大ヒットした曲。「SPARKLE」や「MUSIC BOOK」といった吉田美奈子作詞の曲も素晴らしい。大瀧の名盤同様、真夏のリゾートで聴きたいアルバムとしてロングセラーとなっている。

 

3位は松岡直也の「九月の風」(1982:永井博)である。当時、フュージョン喫茶でヘビーローテーションで流れていたっけ。このアルバムは何と言っても「THE SEPTEMBER WIND」に尽きると思う。1位、2位のアルバムと違って、過ぎ去った夏への哀愁が漂う。センチメンタルなインストゥルメンタル、なんつってね。最高です。